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正確さとは?


「1秒遅れている時計と止まっている時計、どちらが正確か」という問題があります。止まっている時計は1日に2回だけ正しい時間を示しますが、1秒遅れの時計は常に1秒遅れています。


穴を固定する行為は、止まっている時計と同じです。臨床では、1秒遅れの時計のように常に動いている状態を把握する方が、おおよその時間を捉える上で重要です。動的なものは固定されたものではなく、常に曖昧さを含んでいます。臨床においては、この曖昧さを理解することが不可欠です。


凡人と達人の差は、この曖昧さを受け入れられるかどうかの違いと言えるかもしれません。達人同士でも、無意識の背景や条件設定によって結果が異なる可能性があり、同じ人を見ても同じ診断結果にならないことがあります。


治療結果も登山と同じで、複数のルートがあり、どのルートを選ぶかは人それぞれです。これが多くの流派が存在する理由かもしれません。それぞれの流派は、それぞれの条件によって正しく、また間違っているとも言えます。


同じ人間を見ていても、違う方法で治療するのは当然であり、結果が良ければ良いと考えるのが臨床です。論理派は、同じルートを作ることでこのような現象を減らそうとしますが、これが医療の固定化、つまりエビデンスに基づいた医療につながったと考えられます。


固定化が悪いわけではありませんが、WHOによるツボの位置の特定は研究レベルの話であり、臨床レベルでそのまま適用すべきではありません。研究レベルのものを確率が高いという理由だけで決めつけてしまうと、鍼灸はマニュアル化され、物質中心の西洋医学と変わりなくなってしまいます。


鍼灸には鍼灸独自の捉え方があり、その捉え方で結果を出すことが求められます。西洋医学と同じ土俵で戦っても勝てないので、鍼灸独自の特性を活かすことが重要です。



物質をエネルギーの流れだと捉えてみる


エネルギーの存在形態や、その動的状態によって、経絡や穴が形成されていると考えると東洋医学の経絡や穴の曖昧さが逆に真実味が増してくるのではないかと私は考えています。これを証明する一つの簡単な実験があります。


実験


まず、肩上部の左右差を確認します。例えば、左肩が緊張していると感じた場合、それは左肩周囲に症状が強い可能性があることを意味します。次に、術者が「異常部位であるなら筋肉が弛緩する」という条件設定(思考のエネルギー)を持って再度確認します。

すると、左右が逆転し、左肩が緩み、右肩が緊張する現象が見られます。これは、患者の状態(エネルギー状態)に術者の思考のエネルギーが影響し、身体に変化を与えた結果だということです。エネルギーが相互に干渉し合い、一つの状態を作り出すと考えれば、このような現象が起こるのも不思議ではありません。

この実験には、成功する術者とそうでない術者がいます。つまり、一般的に言う再現性がない場合もありますが、条件が揃えば同じ現象を起こすことができます。再現性が全ての人にないと科学的でないと考えるのは古典物理的な見方です。観察者の条件によって変化するということです。量子力学の世界では観測とはなにかという定義が未だにされていません。それは、二重スリット実験によっても証明されているとおり、観測しようとした時とそうでない時は、光子のふるまいが違うという結果からだとも言えます。


観測するものが変化すれば観測されるものの結果が違うというのが量子の世界です。東洋医学の世界もこれと同じ構造になっていると考えられます。しかし、どのような状態で観察するかという観測者の明確な条件設定によって追試可能になってくるのです。もちろん、これも動的に変化しますので、絶対値ではありません。

例えば、左肩が緊張している人に対して「異常部位なら緊張する」と明確に設定すると、左肩の緊張が、何も条件設定していない時の緊張より強く緊張するのがわかります。初心者の鍼灸師が触っても捉えられない緊張を、ベテラン鍼灸師が明確に捉えることができるのは、技術の差もありますが、このような明確な意識の条件設定があるからです。もちろん、初心者でも条件次第では可能です。


この違いを引き起こしているのは、術者の明確な意識の差と、純粋な思考のエネルギーを作り出す能力です。純粋な思考のエネルギーはエネルギー量が高いのかどうかはわかりませんが、大きな違いがあります。この純粋な思考のエネルギーを作り出す方法が大切であり、それが一番技術の向上につながります。そして、意外にもそれを阻害しているものがあります。


これは術者の経験にも反映されます。目に見えるものしか理解しようとしない術者は、この現象を体験することはできませんが、目に見えないものを捉えようとする術者であれば、明確な条件が揃えば現象を引き起こすことが可能であり追試も可能です。

目に見えるものしか認めない術者は、肉眼(可視光)だけで見ようとします。そのため、経絡や穴を知識として理解していても、実際の生きた経絡や穴を見ることはできません。経絡や穴が術者の明確な条件設定によって出現すると考えると、なぜ同じ患者を触っても初心者とベテランが同じ結果にならないかを簡単に説明できます。


WHOなどが定める穴の位置は固定されてしまっています。これではエネルギーとしての存在である経絡や穴は意味をなしません。穴の位置が固定されると、動的なエネルギーを含む経絡や穴を捉えることは不可能です。少なくとも穴の固定は、術者の意識で変化する可能性があることを無視しています。これでは経絡や穴の本質を捉えることは不可能です。穴や経絡を可視化しようとしても、エネルギー状態のあらわれであるため可視化することは不可能です。穴を固定しようとすればするほど、本質を理解することが困難になります。


最初から曖昧なものだと思っていれば学習の仕方も違ってきます。つまり、固定された穴や経絡の認識では、臨床に応用する上で役に立ちません。

この現象を起こせるかどうかが初期の初期段階ですが、もしかするとそれが一番の難関なのかもわかりません。








エネルギーとは


エネルギーとは仕事をする能力であり、運動エネルギー、位置エネルギー、熱エネルギー、光エネルギー、電気エネルギーなど、様々な形態がありますが、全て肉眼ではその姿を見ることはできません。

またエネルギーは静的なものではなく動的です。電子は常に動いているので、直接質量をはかることはできません。もちろん間接的に正確に測ることができています。現在の最新の測定機では電子の質量は約9.1093837015 × 10^-31 kgです。しかし、一般的な重さを測るような方法では計測できません。


もちろん、これは量子の世界の話です。この量子の世界も直接目で見ることはできませんし、それを実感することは難しいと思います。なぜそうなっているのか現代の科学でも完全には説明できていません。ただ、そうなっているとしか言えないのです。理由が解明できれば、もっと科学は進歩するのは間違いありません。


この事実を受け止めるのであれば、物質は肉眼で見えるものだけと考えるのは早計だとわかります。古典物理学の世界観だけで説明できる程、この世で起こっている事は単純ではないということです。


この考え方は、医学にも言えると思います。物質を追求し続けてきた西洋医学でも理由のわからない症例は山程あります。これに対して鍼灸治療が効果的に働くこともあります。つまり、東洋医学は、そのポテンシャルを秘めている医学だと言えるのです。しかし、最近の鍼灸は、物質優位に傾倒しているように思えてなりません。


これは西洋医学を中心にした学校教育のたまものなのではないかと私は思っています。物質の範疇を超え、エネルギーの塊として人間の身体を捉える教育が、鍼灸治療のあり方を変えるきっかけになるのではないかと思っています。そのような視点で鍼灸治療を見ていくと新しい現象に気づき、臨床の可能性が一気に広がります。


鍼灸治療は、エネルギーのありようを感覚で捉え、診断し、治療を行う治療法だとも言えるのですから、工夫次第で、もっともっと発展して良いはずです。




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