鍼灸と量子力学(その5)
正確さとは?
「1秒遅れている時計と止まっている時計、どちらが正確か」という問題があります。止まっている時計は1日に2回だけ正しい時間を示しますが、1秒遅れの時計は常に1秒遅れています。
穴を固定する行為は、止まっている時計と同じです。臨床では、1秒遅れの時計のように常に動いている状態を把握する方が、おおよその時間を捉える上で重要です。動的なものは固定されたものではなく、常に曖昧さを含んでいます。臨床においては、この曖昧さを理解することが不可欠です。
凡人と達人の差は、この曖昧さを受け入れられるかどうかの違いと言えるかもしれません。達人同士でも、無意識の背景や条件設定によって結果が異なる可能性があり、同じ人を見ても同じ診断結果にならないことがあります。
治療結果も登山と同じで、複数のルートがあり、どのルートを選ぶかは人それぞれです。これが多くの流派が存在する理由かもしれません。それぞれの流派は、それぞれの条件によって正しく、また間違っているとも言えます。
同じ人間を見ていても、違う方法で治療するのは当然であり、結果が良ければ良いと考えるのが臨床です。論理派は、同じルートを作ることでこのような現象を減らそうとしますが、これが医療の固定化、つまりエビデンスに基づいた医療につながったと考えられます。
固定化が悪いわけではありませんが、WHOによるツボの位置の特定は研究レベルの話であり、臨床レベルでそのまま適用すべきではありません。研究レベルのものを確率が高いという理由だけで決めつけてしまうと、鍼灸はマニュアル化され、物質中心の西洋医学と変わりなくなってしまいます。
鍼灸には鍼灸独自の捉え方があり、その捉え方で結果を出すことが求められます。西洋医学と同じ土俵で戦っても勝てないので、鍼灸独自の特性を活かすことが重要です。
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