EV化した船
実は、モータで走るものというのに、もの凄く興味を持っていた時期がありました。
なぜなら、もう20年ぐらい前に12Vのバッテリィ(車にもついてます)で走る船外機(船の後につけて走る機関)を買ったことがあったのです。
小さいボートにつけて走らせてみるとバウ(船先)が上がるぐらいのパワーがありました。こんな小さなもので、こんなにもパワーがあるんだったらワザワザ内燃機関(いわゆるガソリンを入れて動くエンジン)じゃなくてもいいのでは?
と思ったぐらいです。一番の理由はメンテナンスの容易さです。
内燃機関は構造も複雑なので、海で使うには、モーターの方が優れている気がしたからです。バッテリィも105A、1個で5時間ぐらいは動くので、沿岸なら問題もないのでは?
と思ったぐらいです。
流石に片手で持てるモーターでは小さい船でしか使うことはできませんでしたが、大きなモーターを積んだら普通に船を動かすことができるのでは?
とも思いました。
EV化した船が今のハイブリッド車ぐらいの比率で走るようになる技術ができたら車のEV化も進むだろうなと思います。しかし、現実はそう甘くないようです。なぜなら水の上を走りますから電動というのは常に感電の危険性もあります。感電死して漂流という船が出てくる可能性も否定できません。
だから安全第一が基本の海では、なかなかEV化というのは進まない可能性がある訳です。
また車と違い、水の抵抗はかなり大きいので、より多くの動力が必要になります。ちょっとした船外機でも1000ccとかあるので、乗り方にもよりますが、70馬力のエンジン(1000cc程度)で1時間で10Lぐらいのガソリンを消費をします。つまり車より、より大きなモーターが必要になってくる訳です。因みに船にはブレーキはありません。スロットルを絞ればすぐに止まるぐらいの抵抗があるからです。それを考えても水の抵抗がどれぐらいあるかは想像がつくと思います。
もちろん、ヨットなら風の力で走りますから小さいエンジンでも問題ありません。環境問題を訴えた子がサミットに来るのにヨットを使ったという話しを記事で読みましたが、ヨットだと風の吹いてくる方向には走れないので、目的地側から風が吹いていたらジグザクに走る必要がありますから余計に時間がかかります。つまり潮の流れや風の方向によって目的地に着くのに時間がかかってしまいます。モータボートで15分で行くぐらいのところにヨットだと1時間半から2時間ぐらいかかります。もちろん風の強さによっても、その時間は大きく違いますし、船の構造によっても違います。
風が強ければ良いかというとそうでもなく、風が強いと波がたつので、波の抵抗で、どうしても失速してしまうので波が穏やかでそれなりに風が吹いているというコンディションでないとなかなか軽快には走りません。
そんな天気は、そう多くはありません。相手は自然ですから人間の思うようにはなりません。
もし、車ででかけようと思い、目的地が西にあるのに西から風が吹いていたら何倍も時間がかかるとしたらどうでしょうか?
きっとその日は西にはいかなくなるはずです。自然エネルギーを利用するというのは、そういうデメリットもあるということです。それは太陽光や風力でも全く同じことが言えると思います。
EV化というのは、自然エネルギーを効率良く使えなければ実現しないし、昨日も書いたように余計に電力を使うので非効率的です。船に内燃機関が用いられるのは、そういう理由もある訳です。また、大きな船はディーゼル機関が殆どです。車ならディーゼルは現在一番敵視されている機関なんじゃないかと思います。でも船の世界では未だにそれが普通です。何故ならガソリンエンジンとディーゼルエンジンの構造の違いによってディーゼルの方が安全性が高く大きな力を生み出すからです。
船舶の世界では、大きなパワーが必要なのと同時に安全性が重要視されます。この二つを両立していなくては使い物にはなりません。それを考えると、ディーゼルというのが一番の選択肢になる訳です。環境活動家の子が乗ってきたヨットの機関もディーゼル機関を積んでいるはずです。積んでいなかったとしても、殆どの船は積んでいます。
小さいとは言え、温室効果ガス排出ゼロにはならず環境破壊はしています。
EV化は、技術的に、かなりハードルが高いというのが、この事実からもわかると思います。また寒いところでも暑いところでも走れなければなりません。今のバッテリィのように寒冷地で走れないというのでも困ります。行ったら帰ってこないと駄目なのです。EV化して安全で利便性が内燃機関より優れているという技術がない限りEV化するのはかなり困難だと思います。
さぁどうする?
という感じです。
昨日も技術者と一緒に昼ご飯を食べたのですが、EV化どう思う?
って聞くと、まだまだ無理でしょ~。
と言ってました。
政治家が訴えているような温室効果ガス排出ゼロになる為には、大きな技術革新が必要です。政治家の目標どおりにしようと思ったら本当に待ったなしです。
絵に描いた餅にならない為の技術を、最低でも、あと3年ぐらいの間には開発しないと、インフラ整備等が間に合いません。どの国も2030年までにゼロにするなんて不可能だろうと思います。それどころか逆に温室効果ガス排出は今より増える可能性もあるということです。
絵に描いた餅は、いくら美味しそうでも食べられないですからね。
理想と現実がこれほど違いがあるのに理想だけが一人歩きしていると思えてなりません。
そうならない解決策は本当にあるのでしょうか?
既にそんな技術があって、隠しているのでしょうか?
それは知りたいですね。
2009年に大阪にある青木ヨットさんの船で試乗させてもらった時の動画です。完全に電動化されています。忘れましたがデンマーク製の電動エンジンだったと思います。意外に音がうるさいというのが気になりましたが、走りは十分でした。
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